過去記事2019年


 

経営委の番組介入など抗議

NHKを考える会が広島局に

 

 NHKを考える広島の会は2月27日、NHK広島放送局を訪れ公共放送としての使命を果たすよう次の通り、申し入れを行った。


①新会長・前田晃伸氏と新経営委員長・森下俊三氏の就任に抗議
 前田氏は元みずほFG会長であり、5代続く財界人登用で安倍首相を囲む「四季の会」参加者である。森下氏は2015年に経営委員になり18年から委員長代行に。かんぽ生命保険不正販売問題のNHK報道をめぐり、石原前委員長と「会長への厳重注意」を進め、放送法32条に違反した。

 森下氏は3月5日の衆院総務委員会で、経営委の会合で番組への意見を述べたと証言。「放送の中身は話していない」との従来の説明を翻した。また不正販売情報をネットで集めた手法について「作り方に問題」があると批判している。放送法は、NHKの最高意思決定機関である経営委が、個別の番組に介入することを禁じている。経営委が特定の番組について意見や感想を執行部に伝えることが問題。
 森下氏や石原前委員長の他にも、番組内容に批判的な発言などをした委員が数人いたことも報道されている。経営委員12人のうち9人が任期継続で、NHKを考える会がこれまで辞任を求めてきた長谷川三千子氏も再任された。これでは政府から独立した公正な経営は望めない。「考える会」は経営委員選任など放送行政改革に、政権から独立した独立行政機関の開設を求めている。
② 繰り返すな「大本営発表」報道、「安倍チャンネル」化の危険な結果の自覚を  
 黒川弘務東京高検検事長の定年延長を検察庁法に反して閣議決定したのは,、極めて異常な措置であることを多くの報道機関が指摘しており、国会論戦で再三にわたり質疑が行われたが、NHKの「ニュース7」「ニュースウオッチ9」は、この問題を取り上げていない。司法、行政、立法の三権が正常に働いてこその民主主義だ。権力の動きを監視する報道の使命を果たしてもらいたい。
③ 視聴率重視の民放並み「番組宣伝」はNHKに不要。内容充実優先を
受信料収入に依拠する以上、宣伝ではなく番組批判に耳を傾けるべき。番宣は時間つぶし。数多くの優れたドュメントや特集番組がありながら、「慰安婦」問題や「森友・加計学園」疑惑はなぜか登場しない。
 また、年末の「紅白歌合戦」の新聞広告はやめること、広告の掲載紙とそれぞれの広告費を明らかにしてほしい。 

④ 批判や抗議に対し、真摯な対応を

 NHKの政治報道への批判が、全国で集会や抗議デモを含め広がっている。NHKを考える会などによる抗議や申し入れが中央・地方で相次いでいるが、申し入れに対する態度は、公共放送にあるまじきもの。ただ聞きおくだけで「上に伝えます」という形だけの対応を繰り返し、文書による回答からも真摯に応える姿勢は全く見られない。受信料で成り立つ公共放送としてのNHKらしく、責任者が出席して視聴者である市民と真剣にやりとりを。
⑤ 国民の「知る権利」に応え、マスメディアは忖度せず、公平・公正な報道を(放送法第4条)
⑥ 表現の自由を求めた「憲法21条」を守ること
                                    (20.3.18) 


議場で自衛隊・高校生が合同演奏

呉鎮守府130年記念事業

   12月9日、「呉鎮守府開庁130周年記念事業」、「開かれた議会をめざして」として、自衛隊音楽隊が参加する「議場コンサート」が呉市議会で行われた。議場の登壇席の周りには、海上自衛隊呉音楽隊と呉市立呉高校吹奏楽部の生徒が入り交じって並び、市民約150人を前に、「宇宙戦艦ヤマト」や「パプリカ」など7曲が演奏された。
    議場での演奏に先立ち、呉市役所玄関前では市民35人が「議場コンサート反対!」「呉市を軍都に戻すな」「議会に軍楽隊は不用」「呉市を平和な街に!」などのプラカードを掲げ、マイクで反対の理由や思いを、通行する市民や市役所関係者に訴えた。【写真】反対の市民が危惧していた「軍艦マーチ」など「軍歌」はなかった。
    民主主義と地方自治の要である市議会の議場で、実力組織である自衛隊の音楽隊が演奏するというのは全国で初めて。反対する市民は「言論の場に『武力』は似つかわしくない」、「高校生が懸命に演奏し、市民が拍手して聞き入るという光景は、何とも言い難い」と話していた。
   呉平和市民連絡会は、今回の取り組みについて振り返り、今後の進め方を検討する予定だ。(O)

                                                                                                                               (19.12.12)

 


マッチの灯りが

闇の深さを教えてくれる!

 

永田さん「安倍とメディア」を

明快に語る

 「加熱する嫌韓報道 なぜ萎縮?政治報道」をテーマに「安倍政権とメディア」を考える市民の集いが12月7日、広島市西区で開かれ市民110人が参加した。「HKを考える広島の会、日本ジャーナリスト会議広島支部、広島マスコミ九条の会、が主催した。
 集いでは武蔵大教授の永田浩三さん【写真】が「伝える責任、伝えない罪」と題して講演。「ドキュメンタリーは声を上げられない人のためにあり、資料は必ず眠っている」とし、「歴史は民衆の手で動く」と強調。
 「桜を見る会」の疑惑では田村智子議員のクリ-ンヒットにメディアが連動し、NHKのスクープはホテルニューオータニの会費が最低でも11000円で、5000円では公選法違反の買収の疑いがある。また安倍昭恵さんが深く絡んでいたことも分かってきた。招かれていた人たちの中には、ネットでの工作員がたくさん混じっていた。安倍首相の応援団としてのネット宣伝工作隊が野党に対してネガティブキャンペーンを繰り広げている。 
 一方、安倍政権の旗振り役としてのNHKニュースでは、前川喜平さんの覚悟の告発インタビューを報道局長と政治部から圧力があり、お蔵入りにしたままと語った。また、かんぽ不正を暴いた番組をめぐり、NHKの最高意思決定機関である経営委が会長に厳重注意の圧力をかけたのは放送の独立性を侵すと批判した。
 あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」では「平和の少女像」の前で生まれたさまざまな会話があり、10月8日から14日まで再開が実現した。たくさんの人たちの努力と連帯があり、メディアもそれを支えた。 永田さんは「健全で豊かな言論・表現空間をつくることに努力すべきであり、一本のマッチの灯りが周辺の闇の深さを教えてくれる。芸術とは少数派の小さな声、カナリアのような存在だ」と訴えた。(M)                               (19.12.10)


「言論の不自由展」を企画

元NHKプロデュサーが語る

 日本ジャーナリスト会議、広島マスコミ九条の会、政府から独立したNHKをめざす広島の会の会など言論・表現の自由にかかわる3団体の主催による講演会を下記の通り開きます。

 友人、知人をお誘いあわせの上、参加いただきますよう、お願いいたします。


ジャーナリズムの突破力

「憲法のつどい」 安田純平さん語る

  「憲法のつどい・ヒロシマ2019」が11月1日、広島県民文化センターホールで開かれ、立ち見も出る550人が参加した。「戦争させない・9条壊すな!ヒロシマ総がかり行動実行委員会」の秋葉忠利共同代表(前広島市長)が開会挨拶した後、シリアで武装勢力に40か月拘束されたジャーナリスト安田純平さん【写真】が「ジャーナリズムの突破力」と題して記念講演。 

 安倍政権が憲法改正草案に盛り込んでいる非常事態条項の危険性や、テロリストとレジスタンスは何が違うのか、戦場取材をしなければ真実が伝えられないなどと語った。 

 最後に「改憲発議を阻止することに全力を上げ、来る衆院選で改憲勢力を打ち破るよう奮闘します」との集会アピールを採択。共同代表の一人である川后和幸さんが閉会挨拶し、参加者全員が「止めよう!改憲」のプラスターを高く掲げて、決意を新たにした。 

                                    (19.11.9) 


NHK経営委の「会長への注意」に抗議

「かんぽ不正事件」で広島放送局に

 政府から独立したNHKをめざす広島の会の代表は10月8日、NHK広島放送局を訪れ、広報事業部長に下記のNHK会長らに対する「抗議書」を手渡し、見解を質した。「抗議書」は、かんぽ生命保険の不正事件を報道したNHK番組「クローズアップ現代+」での報道や、放送で視聴者に情報提供を呼び掛けたことに対する郵政グループ側からの「抗議・介入」に対して、経営委員会が「会長への厳重注意」を決定したこと、上田会長の「釈明文書」を報道総局長が郵政グループに持参するなどの事態は断じて許されないという内容。

 併せて、「会」として、日放労(NHK労組)委員長の見解が「経営委員会に直接訴える回路を持ち得ていれば、NHKに影響を強く及ぼしうる可能性があるとの疑念を抱かれかねない。そのように理解されてしまえば、健全な民主主義社会のために視聴者に等しく向き合うことを求めている受信料制度、ひいては放送法本来の趣旨を毀損しかねないと考える」とした点を重視し、視聴者あってのNHKであることへの責任と自覚を訴えた。

 広島放送局は「申し入れは承り、責任持って伝える」と相変わらずの対応で、窓口担当としての見解などは一切聞かれなかった。

                                    (19.10.16)

                                  2019年10月8日
NHK会長               上田 良一 様
NHK経営委員会委員長   石原  進 様
NHK広島放送局長     姫野        浩 様

 NHKの経営委員長及び会長の日本郵政グループへの
「放送法の精神に反する対応」に抗議します

                                                          政府から独立したNHKをめざす広島の会
                                                 共同代表   利 元  克 己
                                                                                                                                        難 波  健 治 
                                                                                                                                        沢 田       正 

   「NHK経営委、会長を注意  かんぽ報道抗議で」-9月26日に毎日新聞1面トップなどで報じられ、次第に全容が明らかにされた今回の郵政グループとNHKを巡る事態。NHK経営委の対応は憲法21条に依拠して生まれた放送法第1条及び第3条、第32条の基本理念にも背く行為であり、「公共放送」を支える受信料制度の根源を揺るがす重大な事件と捉えます。禁じられた「個別番組への介入」を侵した石原進経営委員長には「会長注意の決定」を取り消し、委員長辞任を求めます。視聴者の信頼を裏切った上田良一会長には厳重な抗議を申し入れます。

 NHK番組「クローズアップ現代+」が、かんぽ生命保険の不正販売問題をいち早く報道したことは、公共放送として高く評価します。ところが、その報道に対し、日本郵政グループがNHKへ、抗議や申し入れを繰り返し、最終責任者として上田良一会長の編集責任を問いました。放送行政を所管する総務省元事務次官の経歴を記して経営委員会へ文書を送り、会長の管理責任追及を迫るなどの事態は断じて許されることではありません。こうした外部の圧力には毅然と対処すべき上田会長や石原経営委員長らが、あろうことか「郵政への釈明」や「会長に厳重注意」というあり得ない対応をしたことも明らかになりました。予定していた続報番組はほぼ1年間も放送されず、放送現場トップの放送総局長を郵政側に出向かせて会長の釈明文書を代読させたことや会長を「厳重注意」処分とした経営委員会の記録も残していないなど、驚くような事態が次々に明らかにされています。いずれもNHKの自主・自立、視聴者の信頼を裏切る行為と考えます。

 経営委員会の今回の対応は、主権者である国民多数の声には「聴く耳」さえ持たない安倍政権の下で、政権と利害を共有する外部圧力に屈し、その経過も残さず隠すという、これまで森友学園国有地不正売却事件や加計学園獣医学部新設疑惑で飽きるほど見せつけられてきた「政権を忖度する」官僚の手法とまったく同じものです。「安倍チャンネル化した公共放送NHK」という視聴者の疑念をさらに深める醜態です。

日本放送労働組合がNHKに働く人たちを代表して以下のような中央委員長見解を9月27日付でホームページに発表しています。「今回のケースは、一般の『視聴者目線』からすれば、経営委員会に直接訴える回路を持ち得ていれば、NHKに影響を強く及ぼしうる可能性があるとの疑念を抱かれかねない。そのように理解されてしまえば、健全な民主主義社会のために視聴者に等しく向き合うことを求めている受信料制度、ひいては放送法本来の趣旨を毀損しかねないと考える」。まったく同感です。NHKがこうした内部からの声にも応え、「国民の知る権利に応える」公共放送の確立へ向け一層尽力されることを期待します。  
                                                                                          以 上

                                     (19.10.16)

 


国境を越えて平和と人権が

尊重される社会を

日韓のメディア労働者が共同宣言

 

 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)は9月28日、韓国の「言論労組」とともに「日韓両国のメディア労働者共同宣言~事実に基づいた報道で、国境を越えて平和と人権が尊重される社会を目指そう~」の共同宣言を発表した。

 新聞労連はこの共同宣言について「日韓双方のメディア労働者が、ナショナリズムを助長することなく、事実に基づいた報道を行うことによって、平和と人権が尊重される社会を目指すものです。この共同宣言を基礎にしながら、MICと言論労組は、日韓のメディア関係者の交流を進めていく予定です」としている。全文は次の通り。

           ◆  ◆  ◆  

      【日韓両国のメディア労働者共同宣言】  

 ~ 事実に基づいた報道で、国境を越えて平和と人権が尊重される社会を目指そう ~

 

 歴史問題に端を発した日韓両国の政治対立が、さまざまな分野での交流を引き裂き、両国の距離を遠ざけている。
 歴史の事実に目を背ける者に、未来は語れない。
 過去の反省なしには、未来を論じることはできない。
 排外的な言説や偏狭なナショナリズムが幅をきかせ、市民のかけがえのない人権や、平和、友好関係が踏みにじられることがあってはならない。いまこそ、こつこつと積み上げた事実を正しく、自由に報道していくという私たちメディア労働者の本分が問われている。
 今日、日本の「マスコミ文化情報労組会議」と韓国の「全国言論労働組合」に集うメディア労働者たちは、平和と人権を守り、民主主義を支えるメディアの本来の責務をもう一度自覚して、次のように宣言する。  

一、我々は今後、あらゆる報道で事実を追求するジャーナリズムの本分を守り、平和と人権が尊重さ

  れる社会を目指す。
 一、平和や人権が踏みにじられた過去の過ちを繰り返すことがないよう、ナショナリズムを助長する

  報道には加担しない。
         2019年9月28日
                           日本マスコミ文化情報労組会議
                           韓國 全国言論労働組合

                                    (19.10.2)

 


取材現場「スガ化」の恐れ

 言論危機状況下「不戦のつどい」開く

    JCJ広島支部は8月31日、「第43回不戦のつどい」を広島市中区の平和記念資料館地下会議室で開いた。例年、このつどいは1945年に戦艦ミズーリ上で日本が降伏文書に調印した9月2日に開催しているが、今年は中国新聞労組・新聞労連との共催で前倒しして開き、約100人が参加。「FIGHT FOR TRUTH~今、政治取材の現場で起きていること~」をテーマに、新聞労連の南彰委員長【写真・左】基調報告と憲法をテーマにした講演活動を全国で続けている楾(はんどう)大樹弁護士(ひろしま市民法律事務所所長)【写真】の講演、権力とメディアと市民の関係などをめぐる両氏の対論に耳を傾けた。


 南氏は「官邸質問制限と知る権利」と題し、まず「表現の不自由展・その後」の中止問題を取り上げ、民主主義社会を支える「表現の自由」や「知る権利」を脅かす名古屋市長らの言動に抗議し、撤回を求める―としたMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)の声明について「『表現の不自由展』が続けられる社会を取り戻そうというのは、メディアの現場で働く者の使命だ」と述べた。
   そのうえで、自身も朝日新聞の政治記者として実感してきた最近のメディアの現場状況に言及。特に、首相の定例ぶらさがり取材廃止など公の取材機会がどんどん狭められる中で、首相官邸の取材の場として唯一の窓口である官房長官記者会見が変質してきている実態を指摘し、その契機となったのが2017年6月の加計学園問題をめぐる東京新聞社会部の望月衣塑子記者の質問連発だったと明かした。以降、同記者の会見での追及に対し、指名権を使って後回しにしたり、質問数を制限したり、質問中に官邸側の司会者が「簡潔に」などと妨害したりと従来のルールを覆して次々に規制をかけてきた。

    さらには、政府に都合の悪いことは一方的に「事実誤認だ」「不適切だ」とレッテル張りをしていったことを同記者と菅義偉長官とのやりとりを具体的に示しながら「国民の知る権利を阻害するもので絶対に許せない」と批判。加えて「これは望月記者一人の問題ではない。いずれ番記者にも適用される可能性があるし、各地の取材現場で“スガ化”が進む恐れがある。官邸が記者の質問内容にまで政府見解を押しつけたり、取材の内容にまで枠をはめたりすることは戦前の過ちを繰り返すことになりかねず、みんなで阻止していかないといけない」と強調した。

 

    続いて登壇した楾氏は、憲法とは何かをわかりやすく解説した自著のタイトルと同じ「檻の中のライオン」の演題で、国家権力をライオン、憲法を檻に例えて、憲法の意義や国民の持つ権利の重要性などを語った。

    まずは「憲法を守らないといけないのは誰か」と問いかけ、それは「国民みんなではなくて、99条に定められているように政治家や公務員、つまり国家権力を動かす仕事をしている人たちだ」と指摘。つまり、強いライオンが勝手に暴れ出さないよう閉じ込めておく檻が憲法であり、「権力は憲法という枠の中で使うべし」というのが「立憲主義」、あるいは「法の支配」と言われるものだと説き起こした。次に、11条に定める基本的人権について触れ、「誰から与えられたものでもなく、生まれながらにして人が持っているもの。だから、天賦の人権=自然権と言われる」として、この誰もが人間らしく生きていける仕組みをつくっているのが憲法だとも強調。併せて、13条でうたう「個人の尊重」の意味を「一人一人違っていていい。違う価値観の人も共存していける社会にすること」と解説した。

    さらに、「憲法という檻をつくって我々は何を守るのかと言えば、平和と自由と人権である」としたうえで、基本的人権の第一は自由権であり、中でも一番大事なのは21条に定めた「表現の自由」、つまり「誰もが言いたいことが言えるということだ」と論及。「知る権利」もこの21条で保障されており、「知る権利の行使は権力の監視とともに報道機関の憲法上の使命だ」と言い切るとともに、「国民は主権者としての自覚を持ち、憲法を知り、考え、行動する必要があると訴えかけた。   

                                           (19.9.6)

 


「表現の不自由展・その後」の

 早期再開を求める声明                

 「あいちトリエンナーレ2019」の企画の一つ「表現の不自由展・その後」が中止となった問題について強く抗議するとともに、一刻も早い再開を求めます。

 あいちトリエンナーレは、世界的にも注目される大規模な国際芸術祭です。昨今、自分が是としない表現・意見・思想を激しくバッシングしたり、実際に危害を加えたりする事件が相次いでいます。こうした状況だからこそ、過去に展示が中止に追い込まれるなど物議を醸した作品を展示し、「表現の自由・不自由」について深く考える機会を作ろうとしたことの意義は大きいと考えます。

 ところが、展示開始後、名古屋市長や内閣官房長官、文部科学大臣を含む複数の政治家らによる中止要請や圧力があり、また、展覧会に危害を及ぼす旨の匿名による複数の脅迫がありました。

そのほとんどは「平和の少女像」を標的とし、「反日的」だ、「慰安婦」問題を蒸し返しての日本への攻撃だ、といった類いのものです。しかし、「平和の少女像」は、それが声高に「日本」を恨み憎む展示物でないことは明らかです。今でも世界中の戦闘地域で起こっている戦時性暴力をなくしたいという切なる願いが込められた作品です。「平和の少女像」を「反日的」、「日本国民への侮辱」などと言い募るのは、歴史修正主義の見地の喧伝であり、最初から芸術作品に正面から向き合おうとしない政治的偏見からくるプロパガンダです。

 また、昭和天皇の写真を燃やす作品にも、「御真影」を燃やした「不敬罪」にあたるという批判が集中的に寄せられました。戦前の大日本帝国時代に、天皇や皇族に対する「不敬」を理由に思想・信条・表現・宗教・芸術など市民生活の自由が抑圧され、過酷な弾圧に社会が暗く萎縮したことを思い起こします。「不敬罪」は現憲法の成立にあたって国民主権の理念に反するとして廃止された法規であり、作品の展示の中止を求める理由になりません。

 こうした展示作品への攻撃は、安倍政権が一貫して進めてきた戦争する国づくりのための排外主義・歴史修正主義の煽動によって噴出したものです。そして、政治家の持つ公権力ないし影響力を利用した中止要請、あるいは、暴力をほのめかした脅しによって自由な表現の場を奪おうとする行為は、異論を公権力ないし暴力で封殺しようとするものであり、断じて許されるものではありません。

 あいちトリエンナーレ実行委員会は出品者に諮ることもなく、わずか3日で展示を中止させました。脅迫があったとはいえ、こうもあっけなく「中止」という判断をしたことは、「激しく攻撃すれば」「匿名で脅迫すれば」「政治家が圧力をかければ」、表現の場を潰すことができる、という悪しき前例を作ったことになります。抗議や脅迫に対しては、これに応答しない、警備を厳重に行うなどの対応で、十分に対処できたはずです。

 表現の自由(憲法21条)は、全ての人が、何の心配や恐れをもつことなく、自由に書き、描き、作り、学び、考え、語り合い、公表する権利を保障するものです。それは日本国憲法の大黒柱である基本的人権の重要な核をなすものです。表現の自由は、知る権利と表裏一体となって、表現に接する人々が多様な情報に触れる機会を保障し、ひいては民主主義の発展の基礎となる極めて重要な意義を持っています。

 安倍政権になって以降、日本国憲法が明確にうたっている市民及び労働者の自由を抑圧する攻撃が強まる中で芸術活動の領域まで「自由」が窒息させられていく状況に、私たちは強い危機感を抱いています。

 民主主義に欠くことができない表現の自由と知る権利を守り抜き、より押し広げたいと願う立場から、「表現の不自由展・その後」の早期再開を求めます。それは、現在の日本社会で危機に瀕している多様性と寛容性を取り戻すことにつながるとともに、一時的であっても中止に追い込んだ卑劣な勢力に対する、憲法を活かす側からの応答だと確信します。

   2019年8月31日     

                                                             「2019 JCJ広島支部 第43回不戦のつどい」参加者一同

 

ヒロシマの平和宣言

 この夏、ヒロシマの最大の関心事は、松井一実広島市長が8・6平和宣言の中で日本政府に対し核兵器禁止条約に参加するように迫るかどうか、という点にあった。
 2年前の夏、国連総会で122カ国・地域の圧倒的多数で採択された核兵器禁止条約を、唯一の戦争被爆国の日本政府は米国など核保有国に同調して無視し続けている。
 もう一つの被爆地・ナガサキは、条約採択1カ月後の平和宣言で日本政府に「一日も早い条約への参加」を求め、昨年も「条約に賛同し、被爆国としての責任を果たせ」と迫った。一方、広島市長は宣言でそのことに全く触れてこなかった。
 心ある広島市民はやりきれない思いで市長の姿勢を見守っていた。そんな市民の心に「火」をつけたのは、ICANのノーベル平和賞受賞式で演説したカナダ在住の広島の被爆者サーロー節子さんだった。昨秋、サーローさんは古里での講演で、「広島市民は行動せよ」「被爆地から政府を動かせ」と熱く呼びかけた。この訴えに心を動かされた人は少なくなかった。
 JCJ広島支部などの呼びかけで今春の広島市長選挙では、「市民の願いにこたえる広島市長を実現しよう」と市民派の候補者を擁立。敗れはしたが、被爆地の市長はどうあるべきか、について一石を投じた。
 そして今年の8・6平和宣言である。6月の時点でもまだ、「宣言を政争の具にしたくない」という言い方で条約への参加を要請しない方針にしがみついていた松井市長だったが、ついに「日本政府には唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いをしっかりと受け止めていただきたい」と「被爆者の思い」というかたちで、政府に求めたのである。
 この背景には、広島で核兵器廃絶に向けて活動をしてきた多くの団体や市民の粘り強い活動の積み重ねがあった。
 しかしながら、8・6の式典で平和宣言の後に登壇した安倍晋三首相は、核兵器禁止条約の「か」の字にもふれなかった。
 この日、式典があった広島平和記念公園の周辺では、「安倍さん 核兵器禁止条約に署名を」と大書した横断幕を掲げる市民の姿があった。(広島支部 難波健治)

 

【写真下・右】参院選応援で広島入りの安倍首相に条約への署名を求めてアピールする市民

      (7月14日、本通電停前)

【写真下・左】平和式典参列の安倍首相に核禁条約への署名を求めてアピールする市民

      (8月6日、平和公園前の歩道)                  (19.9.1)

 



JCJ広島主催 

43回目の不戦のつどい 

 日本ジャーナリスト会議広島支部は8月31日(土)、第43回不戦のつどいを平和記念資料館で開きます。例年、このつどいは1945年、戦艦ミズーリ上で降伏文書の調印が行われた9月2日に開催していましたが、諸々の理由により、8月31日に開きます。皆様のご参加をお願いいたします。

 

 ■日 時  8月31日(土) 午後1時30分~4時30分 (開場は午後1時)

 ■会 場  広島平和記念資料館 東館地下 第1会議室

 ■資料代  500円 (学生・障がい者は無料)

 ■内 容  基調報告 「官邸質問制限と知る権利」 新聞労連委員長 南 彰さん

       講  演 「檻の中のライオン」    弁護士     楾(はんどう)大樹さん

       対  論   南さん、楾さん 

 


ヒロシマがヒロシマでなくなる日

金平キャスター 平岡敬さんに聞く

    平岡敬元広島市長にTVジャーナリストの金平茂紀さんが聞く「ヒロシマがヒロシマでなくなる日」が8月4日、広島市中区の広島弁護士会館で開かれ、市民120人が参加した。

 平岡さんは少年時代を日本の植民地だった朝鮮で過ごし、終戦後、広島のおじさんのところに預けられた。大学卒業後、中国新聞社に入り、在韓被爆者問題を取材。「多くの人が苦しんでいる事実を忘れてはいけない」と強調した。
 核兵器禁止条約に広島市長が消極的なのに対し「自分の言葉で言わない.政治から逃げ、怒りがない」と指摘した。
 金平さんが「福島原発事故後も3・11は続いている」と問うと、平岡さんは「人間の基本的倫理が忘れられている」とし、「メディアには弱者に対する気配りがない」と述べた。また、「市民とメディアが新しい社会をつくっていこうとすることがない」と語った。

 【写真】平岡、金平両氏を円形に囲んで耳を傾ける参加者

                                      (19.8.17)

 


 東京新聞「税を追う」キャンペーンに大賞

2019年度JCJ賞決まる

 

 2019年度JCJ賞は、7月13日に開かれた選考委員会で次の5点に決まった。

 大賞には東京新聞「税を追う」キャンペーン報道で東京新聞社会部が選ばれた。選考委員は諌山修 、石川旺、 伊藤洋子、 酒井憲太郎、 柴田鉄治、鈴木耕の各氏。

 選考委員会は次の通り大賞の「受賞理由」を上げている。

 「深刻な財政危機に直面しながら、安倍政権は税金の無駄遣いを続ける。米国からの兵器爆買い急拡大で、5兆円を突破した「兵器ローン」の 実態を浮き彫りにした第一弾。教育や社会福祉など国民生活を犠牲にした軍事費を皮切りに、キャンペーンは、沖縄・辺野古の米軍新基地建設や東京五輪などにテーマを広げ、昨年末の予算編成論議にも影響を与えた。政策の是非を丹念に検証し、利権や既得権をあぶり出す手法や報道姿勢は、多くの読者や識者などから高い評価を得ている。

 

 JCJ賞に選ばれた4作品と「受賞理由」は次の通り。

『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』 みんなのデータサイト出版
 <受賞理由> 「市民放射能測定室」のネットワークである「みんなのデータサイト」が、福島原発事故後、3400カ所以上から土壌を採取・測定し、延べ4000人の市民の協力で2011年3月のセシウム推定値の「県別土壌マップ」(第1章)をまとめた。放射能プルームの動き、100年後の予測も入れた。第2章で食品についての不安を解消し、自分の“物差し”が持てる。第3章「放射能を知ろう」では、放射能の基礎知識、チェルノブイリとの比較などが深く学習できる。国はやらない、市民の市民による市民のためのA4判放射能必読テキスト。

「イージス・アショア配備問題を巡る一連の報道」 秋田魁新報社・イージス・アショア配備問題取材班
 <受賞理由> 2017年秋に始まったイージス・アショア配備問題は秋田、山口県を直接、世界大の問題に突き当たらせている。秋田魁新報は県民の不安に寄り添い、判断材料を誠実に提供していく中で、問題の真意を多角的に探り、県民の声、県知事、市長の取材、議員アンケート、ルーマニア・ポーランドルポを続けた。そして、公立美大での卒業謝辞削除事件を浮かび上がらせ、後に防衛省の適地調査の杜撰さをあぶり出させることになる。配備反対の声は実現していないが、ここには、権力の監視を地で行く地域ジャーナリズムの力の真骨頂がある。

「想画と綴り方~戦争が奪った子どもたちの“心”」 山形放送
 <受賞理由>児童文学者・国分一太郎は1930年、山形県の小学校で教職に就き、「想画」と呼ばれる生活画教育と、「生活綴り方」教育に打ち込んだ。凶作に見舞われた中で、たくましく生きる村人たちの暮らしを、子供たちは生き生きと画に描き、作文に綴った。しかし、国分の教育にも戦争の影が忍び寄り、治安維持法で罪に落とされる。安倍一強政治のもとで「共謀罪」は治安維持法との類似性が指摘される。制作者は、自由に表現できる未来に向けて「釘一本を打ち込みたい」と考え、番組を世に送り出した。

ETV特集「誰が命を救うのか 医師たちの原発事故」 NHK
 <受賞理由>東電福島第一原発の爆発事故発生直後、広島などから多くの医師たちが現場に入り、汚染された住民や爆発で負傷した自衛隊員の治療など、被ばく医療の最前線で奔走した。医師たちの多くは沈黙を守り、その結果、彼らの多様な体験が十分政策に反映されないまま、各地で原発再稼働が始まることになった。取材班は、治療にあたった医師たちをしらみつぶしに訪ね歩き、医師たち自身の撮影による

3000の写真と映像を入手。当時の医療現場のすさまじい実態の全貌を初めて明ららかにした。

 

 JCJ賞贈賞式は8月17日(土) 午後1時から、 プレスセンターホール(東京・内幸町)で開かれる。

                                      (19.8.9) 


リンガヒロシマ 

75言語3500冊の書誌情報を登録  

  広島の原爆文献研究グループ「リンガヒロシマ」は「多言語で読む広島.長崎文献」の検索サイトを今年1月に無料公開した。国内外の40人(「私たちについて」の多言語協力者が情報収集や内容確認をし、現在75言語3500冊の本の書誌情報を登録している。読者の母語で被爆の実相を草の根に届け、「核なき世界」に向けて連帯できる地球市民を増やす一助になりたいと作業を続けた。
    データベース作成の目的は第一に、多様な言語で語られた原爆文献の書誌情報を利用者に届けること。次に、世界各地で出版された原爆文献を通し「世界はヒロシマ・ナガサキをどれだけ共有してきたか」について、現時点での全体像を知る手がかりを提供する。
  全体像を見るために、登録した文献のデータを基に作成した円グラフを、サイトの「視覚化」で紹介している。図1の「登録した本に使用されている言語の種類と割合」を示すグラフによると、2019年7月現在、日本語以外の外国語で出版冊数が最も多いのが英語(38.8%)、その次にドイツ語(5.3%)、フランス語(4.4%)、イタリア語(3.5%)、スペイン語(3.1%)と続く。(1)
 一方、希少言語の多様性と出版物の特性にも注目したい。図2の「出版件数が全体の1%以下の言語の割合と本の登録数」がそれを示している。現在、1冊の本しか登録されていない言語は15件。そのうち過半数の10件を児童文学が占めている。この現状は、とりわけ海外で、多言語による児童文学の文献が被爆の実相を伝えるためにどのような役割を果たしてきたかについて、更なる論考の余地があることを示唆している。
 75言語という多様な言語情報に対応するために、リンガヒロシマが多言語協力者といかに協働したか―については、共同編集者のウルシュラ・スティチェック(県立広島大学客員講師)による「世界で読めるヒロシマとナガサキ―LinguaHiroshimaのデータベース「多言語で読む広島・長崎文献」を巡って<改訂版>」に詳しい。リンガヒロシマのサイトの「印刷物」から論文をダウンロードされたい。

   データベースの公開後にリンガヒロシマは、「ニュース」と題したブログをウエブサイトに併設した。原爆文献に関する新着情報や登録済みの本に関連したニュースなどを掲載している。その中に、今後外国語版が出てほしい本として、松永京子著『北米先住民作家と<核文学>-アポカリプスからサバイバンスへ』(英宝社, 2019年5月発行) を紹介した。この本で、著者の松永氏が取り上げた「核文学」の6作品は、マンハッタン計画で建設されたオークリッジ国立研究所や米国のウラン鉱山の周辺地域に暮らす先住民による核の語りを共通テーマとする。彼ら先住民が、自らの被った「核産業の支配」を「世の終わり」と捉えるのではなく、生き残りのための伝承的物語を紡いできたことに松永氏は注目した。原爆投下以降の核文学にありがちな「核の悲劇」的発想から解放され、「いかに生き残るか」という「核文学」の新たなヴィジョンを、包括的かつ多角的に示している。
   松永氏の著書は、核をめぐる問題の多様性に取り組んだ研究の一例と言える。リンガヒロシマのデータベースのこれからの展開もまた、「核に関する文献」の裾野が広がっている現状と無関係ではいられない。これまで、私たちは、人間の殺戮を目的に米国が、開発・製造・使用した「広島・長崎への原爆投下」に関する文献に絞って調査研究をしてきた。しかし、「ヒロシマ・ナガサキ」を中核に、放射性物質の採掘場や生産原子炉、核廃棄物処理工場、核兵器製造工場、核実験場、世界の核基地、原子力事故の問題にまで広がる出版物の「核文献の同心円」(2)をどう描くか。今後の課題である。
                                                                                           (LinguaHiroshima リンガヒロシマ 中村朋子)

 

(注)
1.このプロジェクトが「原爆文献の世界的共有」をテーマに本を紹介しているため、日本語について     

 は、他言語出版のリストとは異なり、翻訳版のない本は含まれていない。
2.原爆文献で「同心円」のイメージが使われた例を2点紹介したい。秋月辰一郎著『死の同心円―長崎

 被爆医師の記録』(講談社、1972)と栗原貞子『ヒロシマ・未来風景 詩集』(詩集刊行の会、1974)。   

    前者は、被爆者の急性放射線障害による死が爆心地から同心円上に広がっていくことを意味した。 

   後者は、栗原貞子の詩集で、同じ核の被害者であるビキニや沖縄・岩国の核基地に寄せた4篇の詩をま

   とめて「同心円」としている。

                                      (19.8.7) 


無党派・青年とつながる

広島市長選で総括集会で評価

 

    4月の広島市長選に候補者を擁立した「市民の願いにこたえる広島市長を誕生させる会」(略称・「誕生させる会)は5月19日、広島中央公民館で賛同者集会を開いた。選挙運動総括と、当面する参院選での「立憲野党の共闘の呼びかけ」など論議し、確認した。会は、川后和幸代表、難波健治事務局長の体制で存続する。62人が参加した。
   候補者として闘った川后代表が冒頭あいさつ、「初めての取り組みで、結果はご承知の通りだったが、個人の力と団体の組織力、政党の政策力が一緒になれば大きなエネルギーが生まれ楽しい運動になることを実感した」と振り返り、物心両面の支援に感謝した。
 報告と総括案の提起で難波事務局長は「得票結果は正直いってショックだったが、無党派層や青年層らと繫がり、タウンミーティングなど新しい運動スタイルが生れた」「短い期間に賛同人が1300人余も集まった。日本の民主主義が危ないという危機感の表れか。候補者擁立から資金づくり、選挙実務まで、その心意気に裏打ちされた運動だった」と振り返った。

 「誕生させる会」は、昨年末に広島マスコミ九条の会など3団体が「核兵器禁止条約の署名・発効などを政府に迫る、ヒロシマに相応しい市長を誕生させよう」と呼びかけ、1月末に市民と立憲野党の共闘を念頭に「いのちと暮らし、平和を守る」基本政策3本柱を掲げて発足。2か月間にわたって、新しい市民運動型の選挙運動に取り組んだ。                                                                                                 

                                      (19.6.14)


 

新防衛計画大綱と九条

大内要三氏が講演

 

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)広島支部は5月7日、広島市中区で総会を開き、JCJ会員の大内要三さん【写真】が「新防衛計画大綱と憲法第九条」と題して講演した。

 大内さんは、安倍政権下で自衛隊の役割は大きく変わり、米軍とともに戦える武器・部隊編成・指揮系統を整備する計画になったと話した。また、「専守防衛」の定義が変わり、敵が攻めてきたら守るのではなく、敵地攻撃能力を持つことで抑止力とし、「自衛」隊ではなく外征軍へ向かう。典型例が「いずも」を航空母艦に改造、戦闘機を載せることだ。日本の戦闘機は既にグアムで爆弾投下訓練もしていると述べた。
 さらに、第4次「アーミテージ・ナイ報告」が日米共同統合任務部隊の創設を勧告し、自衛隊と米軍の一体化が進んだこと、第3次ガイドライン、安保法制(戦争法)と新防衛大綱で自衛隊は敵基地攻撃能力を持ち、米軍とともに戦う態勢を整え、日本国憲法と自衛隊の「共存」の矛盾は極限に達したとした。
大内氏は、自衛隊を憲法で認知してよいのかが、今問われているとし、防衛政策の基本として①専守防衛、②軍事大国にならない、③非核三原則、④文民統制をあげた。「これらは国会での追及によって出された政府見解であり、憲法9条を守り、自衛隊の軍隊化を阻んできた。今後も憲法改悪・軍拡を防ぐのは市民と野党の力だ。政権が変われば当然、防衛計画は変えられる」と安倍政権打倒を呼びかけた。   

                                    (19.6.14)


金平キャスター講演 

ヒロシマ憲法集会に1100人 

 

「許すな!安倍改憲発議 2019平和といのちと人権を!5・3ヒロシマ憲法集会」が憲法記念日の5月3日に開かれ、1100人が会場のアステールプラザ大ホールを埋め尽くした。劇団「月曜会」の太鼓構成詩「太田川」で幕開けし、戦争をさせないヒロシマ1000人委員会の佐古正明共同代表が開会あいさつ。TBSニュースキャスターの金平茂紀さんが「抗うニュースキャスターが語る崖っぷちの民主主義」と題して講演した。また、ヒロシマ総がかり行動実行委員会の山田延廣共同代表が「闘いに勝つ秘訣はあきらめないこと」と力強く訴えた。

 「安倍政権のもとでの9条改憲発議は許しません」「日本国憲法を守り活かし、元号使用の強制に反対します」など11項目の集会アピールを採択。「止めよう改憲」「止めよう辺野古」「止めよう安倍政治」というプラスターを全員が掲げ、熱気に満ちた集会の幕を閉じた。                      

 ■写真は、講演する金平茂紀さん                  

                                                                                                                                   (19.6.6)


籾井前会長の「一番の理解者」

広島の会  板野専務理事に抗議

 

 NHKは4月9日、元専務理事で現在NHKエンタープライズ社長の板野裕爾氏を専務理事にする人事を発表した。板野氏は籾井勝人前会長時代に専務理事を務めた。

 この人事について、NHKを監視・激励する視聴者コミュニティは12日、「政府が右というものを左とは言えない」という妄言を吐いた籾井会長の「一番の理解者」と呼ばれ、官邸と太いパイプを持っているといわれる板野氏を専務理事に復帰させる人事は到底容認できないとして、理事会で人事の撤回を決議し、経営委員会で再協議を求めることを申し入れた。

 また、「政府から独立したNHKをめざす広島の会」は4月12日、理事会と経営委員会に対し人事の撤回などを求める要請をした。(経営委員会、経営委員あての「申し入れ書」は下記の通り)

 22日には、全国各地のNHK連絡会、JCJなどが申し入れをする。     (19.4.19)

 

2019年4月12日
  NHK会長 上田良一様
  NHK理事 各 位

 

                                     板野裕爾氏を専務理事に復帰させる人事の撤回を求める申し入れ

                                                                                   政府から独立したNHKをめざす広島の会
                                                                                  共同代表:難波健治、利元克己、沢田 正
                                                                                    NHK を監視・激励する視聴者コミュニティ
                    共同代表:湯山哲守、醍醐 聰、浪本勝年(立正大学名誉教授)

 

 皆様におかれましては公共放送をつかさどる重責を担われ、ご多忙のことと存じます。
 去る9日、NHKは元専務理事の板野裕爾NHKエンタープライズ社長を専務理事に復帰させる人事を発表しました。
 しかし、板野氏は、「政府が右というものを左とは言えない」という妄言を吐いた籾井勝人前会長時代に専務理事を務め、「会長の一番の理解者」と呼ばれた人物であり、官邸と太いパイプを持ち、しばしば政権の意向を番組に反映させたと言われています。
 今回の板野氏の復帰人事については、「NHK内で板野氏を推す声はなかった」、「懸念は上田会長も承知していたが、官邸の強い意向で認めた」(『毎日新聞』2019年4月10日)と伝えられています。

 私たちは、NHKが政治から自立し、視聴者・市民の知る権利に応える公共放送としての使命を果たすよう、従来から一貫して要望してきましたが、昨今のNHKの報道はこうした期待に背くものが相次いでいます。
 今回の板野氏復帰人事は官邸におもねるNHKの姿をさらに露わにするものであり、到底、容認できず、撤回を求めます。
 このように申し入れると貴職らは「報道は事実無根。NHKが自立的に決めた人事」と判で押したような弁明をされるかもしれませんが、そのような木で鼻をくくったような応答はもはや通用しません。
 
 申し入れ

 1.上田会長ならびに全理事は、板野氏復帰人事に対する視聴者、世論の厳しい批判を真摯に受け止  

  め、この際、先例、慣例にとらわれず、直ちに理事会で当該人事を撤回すること。
 2.そうした理事会の議決を経て、NHK経営委員会に板野氏の復帰人事の再協議、撤回の議決を求める  

  こと。

 付記 
   私たちは本日、貴職への本申し入れと併せて、NHK経営委員会に別紙のような申し入れをすることを申し添えます。
                                          以 上

 


控訴審は1回で終結

原爆ドーム・かき船裁判

   国土交通省中国地方整備局長が原爆ドームから200㍍の元安川に船上料亭・かき船「かなわ」の新築・占用を許可したのは世界遺産条約に違反するなどとして被爆者や近隣住民らが許可処分の取り消しを求めた裁判の控訴審第1回が27日午前広島高裁で開かれた。原告・控訴人意見陳述と弁護団の控訴理由陳述などの後、三木昌之裁判長がいきなり「弁論を集結する」と述べ、この日で結審した。判決は7月26日に言い渡される。

 金子哲夫原告団長は意見陳述で「原爆ドームの世界遺産登録に大きな力となったのは164万筆を超える市民の署名。1審判決はこうした市民の役割を無視するばかりでなく原爆ドームが伝えようとする『被爆者の慟哭』や『被爆の実相』に真摯に向き合う姿勢を見ることはできない」と原告の請求を退けた昨年9月の1審判決を鋭く批判した。 

 【写真】かき船裁判控訴審第1回で裁判所に入る原告団と支援者 (長谷川潤・撮影)
                                      (19.4.2)


金平キャスターを招き憲法集会

5月3日 アステールプラザで

 

 今年で統一集会としては4回目となる「ヒロシマ憲法集会―許すな!安倍改憲発議」が5月3日(金・祝)午前10時30分から広島市中区のアステールプラザ・大ホール(1200人)で開かれる。   

 記念講演は、TBS「報道特集」のキャスターを務め、第一線で活躍中のジャーナリスト・金平茂紀(しげのり)さん。講演テーマは「抗うニュースキャスターが語る“崖っぷちの民主主義”」で多彩な映像を駆使し90分間話す予定。主催は、戦争させない・9条壊すな!ヒロシマ総がかり行動実行委員会。

 


MICーマスコミ文化情報労組会議

知る権利を守る首相官邸前行動

 

 MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)は3月14日、東京の首相官邸前で、記者の質問内容に政府見解の枠をはめようとする閣議決定に対して抗議し、知る権利の保障を求める行動を行うことを決めた。集合は午後6時45分。


官邸、記者会に「質問制限」迫る

JCJ抗議声明 

 

 昨年1228日、官房長官記者会見に関連して、首相官邸広報部が東京新聞記者の質問に「事実誤認」「度重なる問題行為」があると断定し、同記者会に対し発言や質問制限を迫る「問題意識の共有」を求める申し入れを行った。

 これについて、日本ジャーナリスト会議(JCJ)は2月8日、抗議声明を発表、2月12日にはテレビ朝日「報道ステーション」が取り上げた。JCJ声明と「報道ステーション」後藤謙次氏のコメントは次の通り。

  

★日本ジャーナリスト会議(JCJ)抗議声明
   ウソとごまかしの政権に抗議し

   「報道の自由」の保障を求める 

  日本ジャーナリスト会議は、官邸記者クラブ攻撃をはじめとする安倍政権の「報道の自由」「取材の自由」への干渉、攻撃と、あらゆる問題でみられる説明拒否・ウソとごまかしの姿勢に抗議し、国民の「知る権利」を代表して活動するメディアと記者に心からの激励を送ります。

 首相官邸は昨年12月28日、東京新聞の記者の質問について、「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定し、「問題意識の共有」を求める申し入れをおこないました。

 この行為は、森友・加計学園問題、自衛隊の日報問題から、決裁文書の偽造・変造、労働統計の偽造ま
で、国政の重要問題でウソとごまかしに終始してきた官邸が、記者を狙い撃ちして報道規制を図ろうとしたもので、およそ民主主義社会では許されないことです。
 主権在民の民主主義社会では、政権担当者は、常に国民の意見を聞き、民意に沿った政治が進められていかなければなりません。そのためには、社会状況がどうなっているか、政権がどう判断しているかを含め、あらゆる情報が開示され、国民の判断に役立つ状態にあることが必要です。
 国民の「知る権利」とはまさにそのことであり、為政者には国民に対する 「知らせる義務」 があり、メディアは、その状況を逐一報道する責任を負っています。
 内閣記者会と首相官邸の間には、政治家・官僚とメディア・記者の間で積み上げられた古くからの約束や慣行がありました。しかし安倍内閣は、第2次政権以降、勝手にこれを破り、自分たちに都合がいい形に作り替えようとしています。
 首相がメディアを選別する新聞インタビューやテレビ出演、特定のテーマで一方的にPRするためのぶら下がり取材を続けることと並んで、菅官房長官の記者会見では特定の社の記者の質問中に、官邸報道室長が数秒おきに「簡潔にお願いします」と妨害し、質問の内容が「事実誤認」と誹謗・中傷するような申し入れをするなど個人攻撃と思われる行為をしています。
 これは単に当該の社や記者に対するものではなく、「報道の自由」「取材の自由」と国民の「知る権利」に対する攻撃です。
 既に国会では、森友、加計学園問題での首相や政府側答弁のウソとごまかしが大きな問題になっています。同様に、官邸の記者会見では、重要な指摘に対し、「そんなことありません」「いま答えた通り

です」などとまともに答えず、国民に対して問題を解明し、説明しようという真摯な姿勢は全く見られない状況が続いています。
 記者の質問が当たっていないのなら、なおのこと、ひとつひとつ時間を掛けて説明し理解を求めるのが、本来のあり方であり、説明もしないで、「誤り」と決めつけ、取材行為を制限し、妨害する行為は、ジャーナリズムと国民の「知る権利」に対する卑劣な攻撃です。
 日本のジャーナリズムは、かつて、「真実」を報道させない報道規制と、言い換えやごまかしから、やがて全くの偽りに至った「大本営発表」によって、国民の判断を誤らせ、泥沼の戦争に率いられていった痛恨の歴史を持っています。
 私たち、日本ジャーナリスト会議は、安倍政権が憲法の諸原則や立憲主義の基本を捨て、かつての戦争への道をたどりかねない状況にあることを恐れ、「報道の自由」「取材の自由」と「知る権利」への攻撃に改めて抗議し、官邸の猛省を促すとともに、広く国民のみなさまが、現状を理解し、私たちとともに声を上げていただくよう訴えます。
                                     2019年2月

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★後藤謙次氏のコメント要旨

 2019年2月12日「報道ステーション」 <官房長官への質問めぐり取材制限>

 

「今回の問題は1人の記者と菅官房長官の構図のように見えるが、本質は国家権力とメディアがどう向き合うのか、そこにある。政府のスポークスマンが国民の知る権利に誠実に応える、これが基本なんですね。どんな形にせよ、それが制限につながることはしてはならない。
 われわれ新聞記者は国民の知る権利を担って国民の目となり、耳となり、そして権力の考え方、方針、それを国民に提示していくというのが仕事なんですね。
 私はその記者を直接知りませんけれども、その記者が発言する質問、それは我々全体に課せられた問題なんですね。
 今回の官邸から『東京新聞』あるいは記者クラブ宛てに文書が出たようですが、記者クラブ宛ての文書は、記者クラブ全体で、この記者を村八分にしてくれよ、そういうメッセージと受け取れるんですね。
 これ記者クラブ側の問題があると思うのですが、こういう問題があった場合、なぜ、一致団結して、それをはねのけないのか、我々かつてやりましたけれども、どんな問題であるにせよ、考え方の違う人も一致して権力側に向かい合っている。それが記者のあるべき姿だと思うのですね。
 これを一記者の問題、あるいは一会社の問題として捉えている、そこ自体が私は間違いだと思う。現役記者の奮起を促したい」 


 

首相官邸の質問の制限・妨害など

記者ハラスメントに抗議声明相次ぐ

 

 日本マスコミ文化情報会議(MIC)、メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)は、安倍政権による記者の弾圧・排除や、これらを正当化する閣議決定に抗議する声明を相次いで発表した。

 

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MIC (マスコミ労組会議)声明

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                                 2019年2月18日

                   日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)
                    (新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、
                     映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労)


 安倍内閣は2月15日、菅義偉官房長官の記者会見における東京新聞の「特定の記者」の質問について、「誤った事実認識に基づくものと考えられる質問」と一方的に断定し、「国内外の幅広い層の方々の事実認識を誤らせることにもなりかねず、ひいては、定例会見を行う意義が損なわれるおそれがあるとの問題意識を有している」とする政府答弁書を閣議決定しました。
記者会見は、記者が国民・市民を代表して様々な角度から質問をぶつけ、為政者の見解を問いただすこと

によって、国民・市民の「知る権利」を保障する場です。それにもかかわらず、記者の質問内容にまで政府見解の枠をはめようとする今回の閣議決定は、「取材の自由」や全ての国民・市民の「知る権利」の侵害であり、断じて容認することはできません。首相官邸および閣議決定に署名した各閣僚に対し、厳重に抗議し、撤回を求めます。 

 首相官邸は、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設をめぐり、「埋め立て現場ではいま、赤土が広がっております」と東京新聞記者が質問したことについて、「表現は適切ではない」「事実に反する」と主張し、その質問を「事実誤認」「問題行為」と断じています。しかし、赤土が広がっていることは現場の状況を見れば明白であり、記者が記者会見で質問することは自然な行為です。問題発覚後に沖縄県が求めている土砂に関する立ち入り調査に沖縄防衛局などが応じていないことも事実です。首相官邸の主張は、問題発覚前に行われた調査とすり替えて、意に沿わない記者に「事実誤認」のレッテルを貼る卑劣な行為です。

 また、首相官邸は、「事実誤認」を理由に「9回の申し入れを行った」(菅官房長官)と国会などで答弁し、「度重なる問題行為」を印象づけようとしています。しかし、たとえば国連特別報告者が求めた閣僚との面会が見送られたことについて、東京新聞記者が「ドタキャン」と表現したことは、国際社会の評価に沿ったものです。こうした質問を「事実誤認」としておとしめる行為は、日本政府の国際的信用を失墜させる恐れすらあります。

記者会見で指名権を持つ菅官房長官は約1年半にわたって、この東京新聞記者の質問を後回しにし、司会役の官邸報道室長は「公務」を理由にこの記者の質問数を1~2問ほどに制約していました。さらには、質問中にもかかわらず、報道室長が数秒おきに「簡潔にお願いします」と妨害し、「質問が長い」と印象づけようとしています。一方的に「事実誤認」のレッテルを貼ることを含めた一連の首相官邸の行為は、権力者による記者に対するハラスメント(いじめ、嫌がらせ)行為です。
 首相官邸は昨年12月28日、この東京新聞記者の質問が「事実誤認」「度重なる問題行為」であるとして、「このような問題意識の共有をお願い申し上げる」とする申し入れを内閣記者会に行いました。新聞
労連などがこの申し入れを撤回するよう求めています。事実をねじ曲げ、意に沿わない記者にハラスメント(いじめ、嫌がらせ)を繰り返し、排除しようとする首相官邸の対応が、悪しき前例として日本各地に広まることを危惧しているからです。ところが、政府は2月15日の閣議決定で、一連の質問制限・妨害を正当化し、今後も「ある」と宣言してきました。

 

 日本では第2次世界大戦中、政府が新聞事業令を施行するなど、報道機関や記者の統制を計画し、準統制団体である日本新聞会を設置させるなど、自由な報道や取材活動を大きく制限しました。この結果、報道はいわゆる「大本営発表」に染まり、取り返しのつかない数の死傷者を出しました。二度と同じ過ちを繰り返してはなりません。
 マスコミ・文化・情報の職場で働く私たちは、言論・表現・報道の自由を守るため、首相官邸に対して、不公正な記者会見のあり方をただちに改め、記者に対するハラスメント(いじめ、嫌がらせ)をやめるよう、強く求めます。
 

 

 

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WⅰMN(メディアで働く女性ネットワーク声明

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  安倍晋三内閣は2月15日、菅義偉官房長官の記者会見における東京新聞の「特定の記者」の質問について「誤った事実認識に基づくものと考えられる」「国内外の幅広い層の方々の事実認識を誤らせることにもなりかねず、ひいては、定例会見を行う意義が損なわれるおそれがあるとの問題意識を有している」とする政府答弁書を閣議決定しました。

 この閣議決定は、政府によるジャーナリストへの弾圧、言論統制そのものであり「特定の記者」を超えて、ジャーナリスト一人一人に向けられた「刃」です。
 さらには、言論・表現の自由や「市民の知る権利」に対する重大な冒涜・侵害であり、到底看過することはできません。安倍首相と菅官房長官および閣議決定に署名した各閣僚に対して厳重に抗議し、撤回を求めます。

 官房長官会見において「特定の記者」は約1年半、質問する順番を後回しにされ、質問中には数秒おきに何度も「簡潔にお願いします」などと言われて制止され、妨害されてきました。2月15日の閣議決定では、一連の質問制限・妨害を正当化し、今後も「ある」と宣言しています。
 菅官房長官はこの記者の質問内容に「事実誤認」があるとして「9回の申し入れを行った」ことを明らかにし「度重なる問題行為」という見解を示しました。
 昨年12月28日には「特定の記者」について、質問が「事実誤認」「度重なる問題行為」であるとする「問題意識の共有をお願い申し上げる」との「申し入れ」を内閣記者会の掲示板に貼り出すなどして、記者会全体にアピールしました。特定の記者をつるしあげ、その排除に記者クラブを加担させようとしているようにみえます。

 首相官邸は昨年12月28日、この東京新聞記者の質問が「事実誤認」「度重なる問題行為」であるとして、「このような問題意識の共有をお願い申し上げる」とする申し入れを内閣記者会に行いました。新聞労連などがこの申し入れを撤回するよう求めています。事実をねじ曲げ、意に沿わない記者にハラスメント(いじめ、嫌がらせ)を繰り返し、排除しようとする首相官邸の対応が、悪しき前例として日本各地に広まることを危惧しているからです。ところが、政府は2月15日の閣議決定で、一連の質問制限・妨害を正当化し、今後も「ある」と宣言してきました。
日本では第2次世界大戦中、政府が新聞事業令を施行するなど、報道機関や記者の統制を計画し、準統制団体である日本新聞会を設置させるなど、自由な報道や取材活動を大きく制限しました。この結果、報道はいわゆる「大本営発表」に染まり、取り返しのつかない数の死傷者を出しました。二度と同じ過ちを繰り返してはなりません。
 マスコミ・文化・情報の職場で働く私たちは、言論・表現・報道の自由を守るため、首相官邸に対して、不公正な記者会見のあり方をただちに改め、記者に対するハラスメント(いじめ、嫌がらせ)をやめるよう、強く求めます。
 

 質問を妨害すること、質問内容を「事実誤認」とみなして一方的な申し入れを執拗に繰り返すことは、権力者が特定の記者の弾圧と排除を意図した行為と評価せざるを得ません。質問内容にまで政府見解の枠をはめようとするものであり、この記者の質問は間違っているとあらかじめ決めてかかって質問をさせないなどという行為は断じて許されません。
 その行為を正当化し、今後も「ある」と言明することは、脅迫に等しい効果を持ちます。記者クラブに対する申し入れに至っては、「特定記者」を超えて、権力を監視する報道機関全体に対する圧力であり、不当な支配・介入です。官邸の意向がどうあれ、ジャーナリズム活動の萎縮を結果しかねません。

 こうした安倍政権の一連の対応の根底には「表現の自由」や「知る権利」に対する無知・無理解があり、主権者である市民の権利を軽んじる見方があります。
 国の政治や行政は、市民から集めた税金によって成り立ち、市民の負託を受けて進められています。市民にはその行政の行為をしっかりとチェックし、コントロールする権利があり、その権利は誰からも制限されることなく行使できなければなりません。

 ジャーナリズム活動の根拠はそこにあります。

 記者たちは政治や行政の動向について、不明なことや隠されていることを詳らかにし、意思決定の過程や手続きの妥当性、その効果や結果を含めて、市民に情報を提供する。記者会見もその活動の重要な一部です。
 逆に言えば、政府や自治体といった公共機関は、記者会見を含めたあらゆる場で、市民に対して説明の責任を果たさなければなりません。
 質問内容に対する「事実誤認」のレッテルを貼って質問を妨害することは、国民の知る権利にこたえようとする記者の活動を根底から覆し、市民に背を向ける行為にほかなりません。

 安倍政権の一連の対応は「政府が問題あると見なしたジャーナリストは、取材・報道の自由を制限してもよい」という誤った認識に基づいています。
 過去にあった新聞紙法、記者登録制度による政府の言論統制を彷彿とさせる行為です。戦時中の日本においては、こうした制度のもとでジャーナリズムが死滅し、大本営発表一色に染まって、内外に取り返しのつかない犠牲を生みました。同じ過ちを繰り返してはなりません。

 安倍政権はジャーナリズムに対する誤った認識を改め、直ちに記者に対する弾圧・排除をやめ、記者会見を正常化するよう、強く求めます。 

       2019年2月25日

                       メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)  

                              代表世話人 林美子 松元千枝

 

                                      (19.2.26)